妊娠してから、むくみやすくなったという人は少なくないのではないでしょうか。
特に、足のむくみがきつくなってしまった人も多いと思います。
なぜ妊娠中はむくみやすくなってしまうのか、原因と改善方法を紹介していきます!
なぜ妊婦は足がむくむの?

妊娠中のむくみは大きく2種類あります。
一般的なむくみの場合
成人の身体は約6割が水分で構成されています。
水分は筋肉や内臓などの成分となり、血液やリンパ液などの体液となって体内をめぐり、栄養素や老廃物を運んでいます。
また、皮膚のした(皮下組織)に蓄えられた水分は体温を一定に保つ役割をしています。
そして余分な水分が、尿として排泄されているわけです。
むくみとは、特に皮膚の下に異常に水がたまった状態のことで、医療用語では「浮腫」と呼ばれます。
むくみは顔をはじめ全身どこにでも起こりますが、重力の影響で心臓より下、特に脚に現れることが多いです。
例えば、靴下の跡が残ったり、足のスネや甲を指で押すとその部分がへこんでいたりなどです。
女性は黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で、妊娠していない時でも排卵から生理までの間は特にむくみやすくなります。
そして、妊娠すると出産までの間にこの黄体ホルモンの量は増えるため、さらにむくみやすくなります。
特に妊娠中期から後期にかけては体内の血液量が増えるので、むくみやすさが増します。
日常生活に影響が無い程度のむくみであれば、健康な妊婦の約8割に起こると言われています。
妊娠後期になると、大きくなった子宮が太腿の付け根にある太い血管を圧迫するため、下半身から心臓に戻る血液の流れが滞って、むくみやすい状態になります。
ふくらはぎのポンプ作用が低下して、足がむくみやすい人の場合、静脈瘤が出ていることがあります。
病気が原因の場合
中には病気が原因となってむくみが生じることもあります。
妊娠中に重症なむくみを引き起こす病気には以下のようなものがあります。
・深部静脈血栓症(DVT)
深部静脈血栓症は、体の深いところにある静脈に血の塊(血栓)ができる病気です。
主に足に発症し、足全体が腫れてきたり、痛みや酷いむくみが出てきます。
妊娠中は出産時に胎盤が剥がれることによる出血に備えるため、血液の固まる力を助けるタンパク質が体内で多く作られます。
そのため、静脈の血流が滞りやすくなることから血の塊(血栓)ができやすくなり深部静脈血栓症(DVT)を発症するリスクが高くなります。
・妊娠高血圧症候群(HDP)
妊娠高血圧症候群は、病気のために水分が血管の外に漏れ出し、下半身だけでなく、顔や手足など全身がむくみます。
重症化すると肺にむくみが出て呼吸がうまくできなくなったり(肺水腫)、腎臓や肝臓などが障害されたりします。
・蜂窩織炎
蜂窩織炎は皮膚の細菌感染が原因の病気です。
皮膚が細菌感染した部分は熱を持って赤く腫れ、むくんだような状態になります。
体の部位別 むくみの注意点
むくみは血の巡りが悪くなるのが原因です。
手の指、足の指などの末端は血液が心臓が戻りにくくなるため、疲れるとむくみやすくなります。
特に夕方以降は重力の関係で、下半身にむくみが出やすくなりますが、一晩寝て治るようであれば、それは生理的なむくみなので心配ないです。
また、朝に手のむくみや強張り(手の握りにくさ)を感じやすい人もいますが、起きた後に身体を動かすことで治るようなら心配いりません。
・顔のむくみ
起きているときは重力の関係で水分がしたに流れていくので、顔がむくむことはないです。
顔のむくみは病的なむくみと考えられます。元々心臓や腎臓に持病がある人は要注意です。
<症状>
・朝起きると、顔がパンパン
・目が腫れぼったい
・足のむくみ
大きな子宮を支えるために、一番負担がかかるのが下半身です。
特に夕方以降、足のむくみやだるさを感じやすくなり、ふくらはぎ、足の甲、足首、足の指などがむくみやすくなります。
また、静脈瘤ができている人はむくみやすくなります。
立ちっぱなし、座りっぱなしなど、ずっと同じ姿勢で過ごすのも、むくみを悪化させる原因になります。
<症状>
・足が重く、ふくらはぎがパンパン
・足の甲がクリームパンのようにぷっくりする
・靴がきつくて履けない
・ふくらはぎに静脈瘤ができている
・手のむくみ
血流が悪くなると、指先まで行き渡らなくなってむくみがちになります。
特に、朝起きた時にむくんで手が握れなかったり、強張りを感じる人もいます。
妊娠30週以降には外れにくくなってしまうので指輪を外しておくほうがいいです。
<症状>
・起きたときに手を握ることができない
・指輪が入らなくなる
・グローブをはめたような感じがする
・外陰部の腫れはむくみではない
大きな子宮に圧迫されて外陰部がうっ血し、ぼってりすることがあります。
これはむくみではなく、静脈瘤ができていることが原因です。
膣の壁、小陰唇など、静脈がたくさんある場合は静脈瘤になりやすいです。
むくみの対処法

一般的なむくみの対処法
生理現象による一般的なむくみの場合、特に心配はなく、日常生活のちょっとした工夫や食事面の注意で予防や症状を緩めることが可能です。
・むくみ解消におすすめの食事
食事面ではカリウムやビタミンB1、カルシウムと言った栄養素が極端に不足すると、むくみが出やすくなります。
特にカリウムは体内に残った過剰なナトリウム(塩分)を尿として出す手助けをしてくれます。
塩分のとりすぎは、むくみだけでなく、妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。
極端な塩分制限の必要はないですが、女性の1日あたりの食塩摂取量は7g未満なので目安にしてください。
また、水分補給も重要です。
水分が滞ると、血流は停滞します。
ある程度の水分補給をすることで、体内の水分や血の巡りを促す必要があります。
ただし、水のとりすぎは冷えの元になるので注意が必要です。
また、タンパク質は筋肉を作り身体の代謝を促し、ビタミンB1はタンパク質の働きをサポートしてくれます。
飲み物では、ビタミンB群とカリウムを煮汁に多く含む小豆で作った「小豆茶」もおすすめです。
身体が冷えると血の巡りが悪くなるので、できるだけ暖かいものを口にして血行を良くするようにしましょう!
タンパク質 肉、魚など
ビタミンB1 小豆・豚ヒレ肉など
ビタミンB2 小豆・豚レバーなど
カリウム ひじき・豆・芋・バナナなど
・着圧ソックスをはく(メディキュットなど)
むくみ防止の着圧ソックスは弾性ストッキングとも呼ばれ、足のむくみや静脈瘤を予防、緩和できる医療用ストッキングです。
特別な編み方で作られているため、ふくらはぎの筋肉に適度な圧力がかかり、ストッキングを着用することで、心臓への血流の戻りを良くしてくれる効果があります。
様々なメーカーから発売されていますが、圧が低すぎると効果がないので、圧迫力が19hPaの低圧タイプから27hPaの中圧タイプを選ぶといいです。
初めて履く時にはコツがいるので、まずは膝下までのハイソックスタイプがおすすめです。
ただし、着圧ソックスを履くことで指先が冷たくなったり、痛みを感じる場合は使用しないでください。
・寝る時に足を少し高くする
足の血液を心臓へと戻るのを促すには、足を心臓と同じ高さにするかまたはそれよりも高い状態にするのがコツです。
疲れが溜まると血液のめぐりが悪くなるので、時間を見つけて横になるなど、こまめな休息を心がけましょう。
膝の下や、ふくらはぎから足首の下にクッションを置き、足首が15cm程度持ち上がるような態勢がおすすめです。
・手足浴とマッサージをする
下半身
・足浴しながら、足指ジャンケンをする
深めのバケツにお湯をはり、ふくらはぎの真ん中あたりまでお湯に浸かるようにします。
足を温めながら、足の指を丸めてグーにしたり親指を上下させてチョキにするなどの足指ストレッチをすると、効果的です。
・鼠径部(足の付け根)→膝裏→ふくらはぎへとマッサージ
左右の手でグーを作り、リンパの流れに沿って、鼠径部(足の付け根)を心地よい強さでさすります。
その後、膝の裏、ふくらはぎを下から上にさすり上げます。
あぐらで行えばお腹への負担がありません。温めたタオルを当てるのも効果的です。
また、安定期以降、三陰交(内くるぶしの中心から指4本分上)を優しくさすると下半身の血流を良くして足の冷えを予防してくれます。
・ツボや心地よい場所をおす
妊娠前からむくみやすい人は、足のスネや甲など、心地よく感じる部分をさすってみましょう。
手でグーを作って強すぎない程度の行うのがポイントです。
足の裏や足の指は、子宮に関わるツボが集まる場所なので、自分で強く押すのは避けてください。
マタニティ向けの治療院などで、専門家に施術してもらうことをおすすめします。
お腹が張ってきたらすぐに中止してください。
上半身
・手浴をする
洗面器に42度ほどのお湯を張って、両手をじんわりと温めます。
その際、体液の流れを調節する効果があるグレープフルーツのオイルを1滴落とすと効果的です。
頭からバスタオルをかぶって手浴すると、アロマの蒸気を吸い込む芳香浴もできてリフレッシュ効果があります。
・脇の下→腕へとマッサージ
リンパの流れに沿うようにまずは、肘の方から胸の方に向かって、脇の下をさすりましょう。
次に、手の先から脇の下まで一気にさすります。
手の先の血流を良くして心臓に戻すことで、手の指のむくみが軽減されます。
・ウォーキングや軽い運動を行う
妊娠中は体型の変化に伴い、どうしても運動不足になりがちです。
ふくらはぎの筋肉は、下半身の血液を心臓に押し戻すポンプのような役割をしているため、使われる機会が減ると血の巡りが悪くなり、下半身がむくみやすくなってしまう原因になります。
妊娠中も毎日ウォーキングをしたりマタニティストレッチなどを行なって、適度な運動を心がけるようにしましょう。
ウォーキングの時間は、それまであまり運動をしてこなかった人ならば15分間から始めましょう。
慣れてきたら朝30分、夕方30分の1時間できると理想的です。
ただし、体調のすぐれない日や、お腹がはりやすい日の運動は控えましょう。
また、切迫流産・早産の危険性があり医師から安静を言われている人はいくらむくみを解消したいからといって運動は絶対にしてはいけません。
どうしても解消したい場合はかかりつけの医師に相談してみてください。
・血流を妨げない、ゆったりとした服装をする
きつい下着や、服、靴を履くと血行不良の原因になります。
体型にあう、マタニティ下着や、楽な服装、履き心地の良い靴を心がけてください。
妊娠初期でも、まだお腹が目立たず、体重の変化はないかもしれませんが、ホルモンの影響で体がふっくらとしてきますので、注意が必要です。
病気が原因のむくみの対処法
病気が原因でむくみが生じている場合は、原因となる病気の治療を行います。
深部静脈血栓症であれば抗凝固薬や血栓溶解薬などの血をサラサラにする薬で、血栓(血の塊)ができるのを抑えます。
蜂窩織炎の場合は、抗菌薬による治療を行って、細菌感染が広がるのを防ぎます。
妊娠高血圧症候群では、血圧を下げる薬や痙攣発作(子癇)を予防する治療が行われます。
自己判断で過剰な食塩や水分の制限などを行うと、かえって病気が悪化してしまうことがあるので、食事制限などは医師の指示のもと行うことが重要です。
いずれにせよ病気が原因のむくみでは、自己判断での対処は禁物です。
必ず主治医の指示に従ってください。
なお、脚にむくみがみられる妊婦さんで、以下の症状もみられる場合は特に注意が必要です。
・血圧が高い(140/90mmHg以上)
・片方の脚にだけむくみがあり、赤みや痛み発熱がある
・手や脚にまでむくみが生じている
・むくみが急激に悪化した
・呼吸困難、震え、痙攣、急な腹痛や頭痛などの症状もある
まとめ
妊娠すると、運動不足や子宮の圧迫により血の巡りが悪くなってしまうため、いつもよりむくんでしまうんですね。
体調に合わせて、軽い運動と食事にも気をつけてむくみを予防していきましょう!!
赤く腫れていたり、痛みが強い場合などは病気が隠れている場合もあるので病院に受診してくださいね。
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